古庄史老さんには2つの顔があります。
「ジェラート屋」のご主人としての顔と酪農家としての顔。
古庄史老さんは自分の牛から搾った牛乳と地域で取れた完熟の果物などの天然素材を使い、手作りで安心・安全な製品を作ることに徹底的にこだわっています。
効率やコスト追求のため、あるいは濃厚さや風味の演出のために香料や添加剤を使った不自然な味の製品が大量に出回る現在にあって、体にいいもの、安心なものを届けたいという古庄さんの姿勢は高く評価され、厳しい選択眼を持つ百貨店のバイヤーなどにもその名は知られています。
古庄さんの製品作りにはこだわりがあります。ひとつは、原料となる牛乳。
「味を決めるのは原料となる牛乳だ」と古庄さんは言います。同時にそれはもっともコストがかかる部分でもあります。酪農家として、自分で搾った新鮮な牛乳を贅沢に使うことがすべての基本です。
もうひとつは、材料に地域で取れた完熟のものを使うこと。季節に応じてイチゴ、シソ、かぼちゃ、黒大豆、ヨモギ、カボスなど近所の農家から有機栽培のものを分けてもらいます。
またヤマモモなどを山から摘んでくることもあります。それらはいずれも、自分の目の届く範囲のもの。それらの原料を、店の中にある製造室で息子さんの勉さんと一緒に手作りで製品にしていきます。
取材当日も店内に併設された製造室では勉さんが製造の真っ最中でした。太陽がさんさんと差し込む店内のテーブルでは、ニコニコしながらジェラートを食べる家族連れでにぎやかです。
子供たちの未来へ、ジェラートに込めたメッセージ
「食料・食品は生命の糧、子供たちに食べさせるものはきちんとしたものでなければならない」古庄さんは、平成12年度から「食育」の活動にも取り組んでいて、「酪農教育ファーム」として、多くの子供たちの受け入れも行っています。
子供たちは牧場で実際に牛にえさをあげたり、ブラッシングなどの世話をしたり、搾乳をしたり、時には鶏の解体なども体験します。牧場にこられない子供たちのためにトラックに動物を乗せて「出前授業」をすることもあるそうです。
これらを通じて生き物に対しての慈しみの心や命の尊さ、食べ物への感謝の念などを伝えています。
また、バターやジェラートを手作りで作らせるなどの授業も行ないます。「今の子供たちは、本物の味を知らない。完熟の果物などを食べた経験もない。本物を経験させればその味は決して忘れることはない。その意味ではジェラートは子供も大好きだからね」。
古庄さんの作るジェラートには子供たちの将来に向けた“メッセージ”も込められているということを強く感じました。
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